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剣の少女
ブルク村。
標高の高い山に囲まれた、寒く、孤独な村。
他所から誰かが来ることは滅多になく、そして村人が外に出ることもない。
そんな閉鎖的な環境だ。
他所で生まれ、幼い頃に母に連れてこられた私との間に、十年経っても埋まらない溝があるのは仕方ないことだった。
だから、
「カルラよ。お前を正式に村の一員に迎えようと思う」
曇り空の午後。村長宅に呼びつけられ、そう言われた時は、本当に驚いた。
「お前も今年で十七か十八だろう? 既に成人と言える。これを機に、村にお前の居場所を作ってやろう。感謝するがいい」
白く長いヒゲをさすりながら、村長は威厳があると思っているのであろう声色で言う。
ようやく、報われるのか。そう思った。
十年間。私は爪弾きにされながらも村から追い出されない為、“誰もやりたがらないこと”を積極的にやった。
村の周りに巣食う危険な獣や、魔物と呼ばれる怪物の相手だ。
何度も死にかけた。無事では済まなかった。
しかし、生き延びた。
生きるために死に物狂いで己を鍛えた。飢えないために木の根を齧り、泥水を飲んだ。
水たまりに映る己の荒んだ顔、乾いた血がこびりつく黒髪を見た時には言いしれぬ感情がこみ上げたこともあったが、それでも、戦い続けた。
その結果、村人は私を追い出したくても追い出せなくなった。村の男たちが犠牲を出しながら対処していたものを、私ひとりで済ませられるようになったのだ。
私は十分、私の有用性を示せていた。
ただそれでも、“居場所を与えられた”とは言えず、“追い出されなかっただけ”だ。私に家はなく、未だ村外れでテント暮らしだ。天候が荒れる度に命の危機を感じている。
温かい暖炉のある家。今まで参加を認められたことのない、村の市や祝祭。
朝を迎えられるかの不安もなく、安心して眠れる生活。生きることを楽しめる人生。
それらに憧れていたのは、事実だった。
だから私は複雑な感情を折りたたみ、礼節を保つ。
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