生贄の少女から、剣の少女へ

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生贄の少女から、剣の少女へ

 一晩も経つと、マリーナのことが少しだけ理解できた。  とにかく、よく喋る。一方的に色々なことを聞かせてくるのだ。星の話や、羊の話など。  しかし、苦労らしきものはそれくらいだ。私に押し付けるほどの仕事とは思えないのだが……。  ――気づけば、木立の向こう側から太陽が登ってくる。 「寝なくて良いんですか、マリーナさん」 「寝てたらお喋りできないよう」  当たり前のことを返してくるマリーナだったが、欠伸混じりだ。  しかし、まだ頑張るらしい。 「それに! ずっと私ばっかり喋ってるじゃん。カルラのことも聞きたい!」 「いえ、話すのは苦手で……」  知らぬうちに呼び捨てになっているが、それはそれ。  壁越しにも強い期待の感情が伝わってくる。顔は知らないが、彼女は目を輝かせていることだろう。  ……仕方ない。 「話とは、例えば?」 「カルラって、ブルク村の外から来たんだよね。どこから来たの? なんでこの村に?」 「覚えてません。物心ついたときにはもう、母と共に旅路の最中でした」  露骨に不満そうな気配が伝わってきた。  ここから先は、あまり愉快な話ではないが……。 「十年前、ブルク村に連れてこられました。古い知り合いに会いに来たとか」 「うん」 「すぐに戻るから、待っていて。母はそう言って、いなくなりました」 「うんうん」 「終わりです」 「……え?」
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