悪魔はドロップキックがお好き

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───── 南町の駅から歩いて10分。 この日の業務を終えた僕は、「案件の報告がてら食事でもしよう」と中学からの同級生であるナラ君からの誘いを受けて、これまた僕たちの同級生であるヨネダ君がオーナーを務める、イタリアンレストラン『rose(ローズ)』に向かっていた。 レストランへ続く街路樹の並ぶ細い裏通りは、全くと言っていいほど人通りが無い。電車を降りた僕は、この細い裏通りを歩きながら、先ほど使用したSIGSAUER(シグサワー) P320の弾倉を抜き出し、ズボンのポケットへとしまった。 銃本体はいつも通りジャケットの内ポケットに。こうしておけば、たとえ銃を奪われても脅威になることは少ない。 「ちょっと!」 道幅の狭い裏通りから、公園を抜ける階段を下りる途中のこと。 「あんただよ!!」 ジャクジャクと奇妙な音と同時に嗄れた老婆の声。 階段下、ベンチに腰をかけている背骨の曲がった小さな背中。テーブルの代用だろうか、みかん箱が足元に置かれていて、紫色の風呂敷がかけられていた。 四月のまだ肌寒い夕刻。陽は沈み、辺りは藍色の空が手を伸ばし始めていた。 僕の首筋から鳥肌が全身へと駆け巡る。 老婆の手にはガラスの器。こんもりと盛り上がった抹茶色に小豆達。 「宇治金時……」 「にゃあ」 呟いた僕の声は、目の前を横切った白猫の鳴き声に呆気なくかき消された。 黒猫が横切ると不吉だなんて聴いた事があるけれど、白猫はどうなんだろうか? 「あんた、この後悪魔に出逢うよ」 どうやら白猫も────同じらしい。
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