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───悪魔?
さほど興味のない話題で、信憑性も皆無。それなのに得体の知れない怪しい老婆の言葉に、僕の心がぐらりと揺れる。なぜだ?
そうだ、これはきっと、先ほど見た白猫さんの仕業に違いない。なんだかんだと理由を付けて、聴こえなかったふりを決め込んだ僕は、こともなげな顔で足早にその場を立ち去ろうとした。
その時───
「あんた。妙な仕事してるだろ? 今夜、尖った尻尾の悪魔に、呪いをかけられるよ」
わっはっは! と豪快に大口を開けて老婆が笑い、それが合図かの様に、公園の木々にとまっていたカラスが一斉に飛び立った。
ジャクジャクと音が聴こえ、再び宇治金時を頬張りだした老婆の足元、みかん箱の上には『占い2000円』の立て札が。
占い師か。
僕は立ち止まっていた足を、急くようにレストランの方角へと向けた。逃げた訳でも、怖かった訳でもない。なぜか僕の胸が昂ぶっていたからだ。
今日は何かがおかしい。
まるで全てが前触れのような。
こんなオカルトめいた思考に陥る事自体、奇妙だと言うのに。
歩き出した僕の口の端は、上向いていた。
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