悪魔はドロップキックがお好き

5/10
前へ
/16ページ
次へ
───悪魔? さほど興味のない話題で、信憑性も皆無。それなのに得体の知れない怪しい老婆の言葉に、僕の心がぐらりと揺れる。なぜだ? そうだ、これはきっと、先ほど見た白猫さんの仕業に違いない。なんだかんだと理由を付けて、聴こえなかったふりを決め込んだ僕は、こともなげな顔で足早にその場を立ち去ろうとした。 その時─── 「あんた。妙な仕事してるだろ? 今夜、尖った尻尾の悪魔に、呪いをかけられるよ」 わっはっは! と豪快に大口を開けて老婆が笑い、それが合図かの様に、公園の木々にとまっていたカラスが一斉に飛び立った。 ジャクジャクと音が聴こえ、再び宇治金時を頬張りだした老婆の足元、みかん箱の上には『占い2000円』の立て札が。 占い師か。 僕は立ち止まっていた足を、急くようにレストランの方角へと向けた。逃げた訳でも、怖かった訳でもない。なぜか僕の胸が昂ぶっていたからだ。 今日は何かがおかしい。 まるで全てが前触れのような。 こんなオカルトめいた思考に陥る事自体、奇妙だと言うのに。 歩き出した僕の口の端は、上向いていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加