星を回収せよ

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星を回収せよ

 かの有名な幻の局所的な流星群には、未だに正しい名前がつくことはない。  あの有名な殺人事件、切り裂きジャックの犯人だってDNA鑑定の結果犯人が誰それではないかとまで言われたくらいだし。謎という謎はきっと、進歩し続ける現代科学が解き明かしてくれるだろう。  私の恩師はそう言い残して、現代科学では手の施しようのない末期ガンで亡くなった。  あれからどれだけの月日が経過して、たくさんの偉くて高名な天文学者たちが現れても、何故急にあれほどまでの流星群が起きたのか説明ができなかったし。そもそも、局所的だったその流星群の存在を証明することすらできていなかった。  当時のはその謎の流星群の話題で世間は持ちきりとなったみたいで、たくさんの人びとの目撃情報が新聞やテレビで報道された。だから、そういった曖昧さの残る情報は案外探せば邯鄲に、山のように出てくる。  けれども、確たる証拠がないのだ。それだけの目撃情報があるのに、映像はもちろん、写真の1枚も残されてはいないのだ。  しかもその流星群が観測されたのは、ほんの僅かな町村だけであったため、集団ヒステリーかなにかとまで言い出すようなエセ専門家が未だに存在していたり、怪しげな宗教団体までできていたりして、ほとほと困っている  どんなに頑張っても正確な証拠に欠けていて、行政も、研究機関も、その力を結集して流星群の正体の究明に努めたが、あの一瞬の流星群を見たという、一部の町村に住まう人々の目撃情報くらいしか収穫はなかったという、虚しさ漂う資料を私は何度も読み返した。  あの幻の流星群は、未だに多くの謎に包まれた出来事である。  というのが、世間一般の認識で、公式発表されている“事実”である。
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