星を回収せよ

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「またここか、探したぞ」 「ああ、先輩。先輩も撃っときますか?」 「いや、止めておくよ」  地下に設けられたこの射撃訓練所に、私は足しげく通っている。  コンクリート色の壁から感じる視覚的な冷たさや、執拗なまでに施された防音設備、そして何より自らが撃った銃の音が、色々なものを書き消してくれるように感じるから。  私にとってこの世界は、雑音が多すぎる。 「あんまり無駄撃ちしてると、さすがにチェックが入るぞ」 「入ったところで、私はクビにはならないでしょう」 「給料カットくらいはあるんじゃないか?」 「ああ、それは今の室長ならやりかねないですね」  前室長だった私の恩師が亡くなってから赴任してきた新しい室長は、やたらと細かいことを気にする。  文系お役人出身で、机の上で眺めることができる数字やデータばかりをやたらと気にしては、あれやこれやと右手の人差し指を本体から独立した生き物のように振り回しては的外れな指示ばかりしてくるのだ。  あまりに的外れ過ぎて、返事をするのさえ面倒で無視をしていると、今度は無視をするなと怒鳴ってくる。そして全く時代遅れというか、やはりここでは的外れ過ぎる上下関係論をのたまっては最後に息切れして、勝手に「もういいから、仕事に戻りなさい」と自ら大人の対応をしてあげた風な言い方で終わらせるのだ。 「あの新しい室長、相変わらず変な指示ばっかりなんですよね。ここ、そういうところじゃないのに」 「知らされてないんだろう、ここが本当はどういうところなのか」 「まじすか、それかなり面倒なやつですね」 「前室長やお前のような“資質”があったり、そもそも説明したころで誰でも理解できるようなことじゃないしな」 「まあ、それもそうですね」  いつも椅子に座りっぱなしの新室長は、きっと何も理解しないままに、室長というポストと、他の省庁では考えられない給与額に釣られてやってきたのだろう。  そう勝手に推測した。  正直なところ、そんなお飾りな上司がきたところで役に立たないどころか邪魔で迷惑に感じる。  先輩は簡単に、なんかあったらあの人が責任を取らされて終わりなんだから、お飾りでも何でも居てくれた方が気が楽だよと笑うのだ。
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