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 モール所長が指を3本立てた。 「一つ、国王陛下を脅す。二つ、戦争を起こす。三つ、諦める。以上」 「えええ」  妖精族の少女が抗議の声を上げた。 「4つ目追加してください。『ストライキ!』」  続いてダークエルフのニシュも声を上げる 「5つ目!『銀行強盗』!」 「6つ目!『夜逃げ』!」 「7つ目!『帳簿誤魔化し』!」 「まともな選択肢がない……」  ドワーフのガイが頭を抱えた。 「とりあえず、まず一つ目の選択肢を行おうと思う」  そう言ったのは、フルーツケーキを食べ終わったモール所長だ。おいしかった。 「脅すんですか、国王陛下を」  信じられない、と言った表情で有翼人のテルが呟いた。 「まぁ、なるべく穏便には済ませたいところだけどな」 「────」  声を発したのは、最後までずっと黙っていた人物である。  彼の名はヒュー。皮膚が岩石に覆われている種族で、独特の声色と、聞き取りにくい独自の言語で話す。彼の言葉を翻訳できるのは、妖精族の少女と、この場ではモール所長のみである。  妖精族の少女が、岩石族ヒューの耳元まで飛んでいくと、うんうん、と頷いた。 「──彼は、なんと言っている?」  ドワーフのガイが尋ねた。 「僭越ながら──ケーキのおかわりが欲しいそうです」
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