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 黒髪の男性が葉巻に火をつけた。彼は“3番目の手”と呼ばれる古代エルフの末裔だ。彼の本当の名を知っているものはいない。故に、金庫破りや宝箱破りの際、陰で囁かれていた“3番目の手”という二つ名が、彼の通り名となった。そして、モール所長は彼のことを『サンちゃん』と呼んでいる。 「これから『悪いこと』をしようと思う」  モール所長がにやりと笑った。 「それで、ここへ?」 “3番目の手”がにやりと笑って、ギルドの中を見渡した。 「いいのかい、“色彩”の魔術師が、こんなところに来て」 「だって俺、悪いことしようって思った時に、すぐにお前の顔思い浮かんだもん」 「ひどくね?」 「いいじゃん」  ノリが軽い。 「で、俺にどうしろと?城壁から、“結界の宝珠”を盗んで来ればいいの?」 「いや、盗まれるのは困るな~」 「じゃあ、魔法省に盗賊ギルドから圧力かければいいってこと?」 「ん~、それもな~」 「それとも、外交適当に乱して戦争おこせってこと?」 「それはちょっと面倒くさいな~」 「ハッキリしろよ!!」  一見若者たちの会話に見えるが、話者の一方は髭を蓄えたおじいさんである。 「じゃあ、やっぱり、全国民にアピールするしかないだろ」  “3番目の手”が葉巻を吸った。 「あ、サンちゃんもそういうこと言う?」 「“赤”の魔術師は、ドラゴン退治へ。“黒”の魔術師は、隣国からの呪いを跳ね返し。“白” の魔術師が、国内の伝染病を止めたのなら……。“緑”は、やはり結界を発動させるしかない」     
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