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「契約書。一応、有事の際は勝手に発動していいことになってるけど、意図的に結界を発動させるとなると……」  モール所長が老眼鏡を取り出して、書類の文字を追っていく。 「うん、めんどいな」 「何のために結界を発動させることにするんですか」 「まぁ、避難訓練みたいな感じかな」  モール所長が老眼鏡を置いた。 「避難訓練」 「ほら、火事の時のスクリンプラーとかも、暫く使ってないと、ほんとに発動するか 不安でしょ」 「スクリンプラー」  ここは魔術師の塔なのであろうか、なんだかアレな単語ばかり出てくる。 「なんてったって、120年以上使ってない宝珠だからね。ちゃんと発動できるのか不安になっちゃって……ね! お願い国王陛下! 発動させてみたいの!」  モール所長がくるっとターンをしてポーズを決めた。 「……という作戦で行きます」  モール所長は席について、羽ペンを取った。 「誰がその書類、書くんですか」  有翼人のテルが、デスクの書類の山を見ながら尋ねた。 「もちろん私」  モール所長が言ったので、ほっとため息をつく。 「……と、あなた方です」 「ギャーーー!」  はたして、残業代はきちんとつくのだろうか? “緑”の魔術師の塔は、やりがいがある、アットホームで明るく楽しい職場です!
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