□1

5/10
前へ
/18ページ
次へ
「1等、3億ゴールドだっけ?それだけあれば、働かなくて住むな。さて、仕事やめるか」 「それを“取らぬドラゴンの皮算用”って言うんですよ」 「お茶でーす」  人数分のカップを用意した、有翼人の女性が部屋に戻ってきた。 「あれ、所長、これなんの図ですか? ケーキ配分のグラフですか?」  カップを配りながら、有翼人が訊ねる。 「まぁ、そんなところ」  ケーキではなく、予算の取り合いのグラフではあるが。魔術師の塔の活動費は国家予算でまかなわれており、どうしても業績によって取り分に偏りが出てしまうのだ。 「今年は“赤”の取り分が多いですねー。ドラゴン討伐に成功したんでしたっけ」  グラフを見ながら、妖精族の少女が呟いた。 「もし、あのドラゴンが国境まで来てくれたら、我々“緑”の塔にも見せ場があったんですけどね」 「そういう不穏なこといわないでください」  有翼人が叱った。  モール所長が、テーブルの上で指を組んだ。 「我々“緑”の塔がつかさどるは、結界魔法」  重々しく呟く。     
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加