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「1等、3億ゴールドだっけ?それだけあれば、働かなくて住むな。さて、仕事やめるか」
「それを“取らぬドラゴンの皮算用”って言うんですよ」
「お茶でーす」
人数分のカップを用意した、有翼人の女性が部屋に戻ってきた。
「あれ、所長、これなんの図ですか? ケーキ配分のグラフですか?」
カップを配りながら、有翼人が訊ねる。
「まぁ、そんなところ」
ケーキではなく、予算の取り合いのグラフではあるが。魔術師の塔の活動費は国家予算でまかなわれており、どうしても業績によって取り分に偏りが出てしまうのだ。
「今年は“赤”の取り分が多いですねー。ドラゴン討伐に成功したんでしたっけ」
グラフを見ながら、妖精族の少女が呟いた。
「もし、あのドラゴンが国境まで来てくれたら、我々“緑”の塔にも見せ場があったんですけどね」
「そういう不穏なこといわないでください」
有翼人が叱った。
モール所長が、テーブルの上で指を組んだ。
「我々“緑”の塔がつかさどるは、結界魔法」
重々しく呟く。
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