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「例えば空爆だとかドラゴンのブレスだとか……国への攻撃を感知した場合、宝珠が発動し、国全体を取り囲む結界魔法が発動するのだ。あ、お茶のおかわりください」
カラのカップを差し出すと、有翼人がお茶葉の用意を始めた。
「我々“緑”の魔術師の塔は、宝珠の保守や、使用後の再充填、日々のメンテナンスも、業務のうちの一つだった。しかし」
モール所長が口をとじる。
「この、うっすいのケーキのカスみたいな予算では、それも難しい」
スクリーンの円グラフを指差す。
「えー。宝珠って、そんなに手入れしないといけないものだったっけ」
ドワーフのガイが呟いた。
「いけないものだよ。お前、ここに勤務して何年目だ?」
モール所長が呆れた表情で言う。
「宝珠って、アレですよね。城壁に埋め込まれていて、私がいつも掃除をしているあの緑色の……」
そう呟く有翼人の女性はテルといって、昨年学校を卒業したばかりの新人魔術師だ。
「あれ、てっきり城壁の飾りかと思ってました」
「意味のあるものだから!! そうでなきゃ、我々が掃除なんかする必要ないでしょ」
モール所長が思わず突っ込む。
「いえ、てっきり“緑”の魔術師の塔の仕事がなさ過ぎて、雑用を押し付けられていたのかと」
「悲しすぎる!!」
もっとも、戦時中ではないこの国にとって、結界の宝珠など飾りに過ぎないのかもしれない。
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