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そうなのか。はじめて知った。私の女子力はかのん君の百分の一だわ……。
「ねー、それじゃやっぱアッシュ系かな」
「そうねー。お勤め先はやっぱ地味にしてなきゃいけない感じ?」
「あ、はい。一応」
「じゃあダークトーンのアッシュね」
そこからの紬さんの動きは素早かった。あんまり切りたくないという私の要望を聞きながら、ハサミを入れると不思議と洗練された髪型になっていく。
「あ、そういえば。かのん君は?」
「ここにいるよー?」
その声に振り返るといつの間にかスタバのカップを持って椅子で雑誌を読んでいるかのん君が居た。オシャレか。自宅か。
「さ、出来上がり」
紬さんが鏡を差し出してくれる。そこに映っていたのは一皮剥けたように洗練された自分の姿だった。
「さっすが紬さん! 真希ちゃんすごく似合ってるよ」
「うれしいです……けど」
「けど?」
「……なんか恥ずかしいです。自分じゃ無いみたいで」
そう言うとかのん君はにこっと笑った。けれどそれ以上ににまーっと満面の笑みを浮かべているのは紬さんだった。
「なぁにー? かわいいじゃないのこの子―!」
「あーダメ! 真希ちゃんは俺のだよ!」
ぷうっとむくれたかのん君に腕を取られる。
「俺からの誕生日プレゼント、気に入った?」
「うん、ありがとう」
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