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美容室を出ると、もう夕方の気配が空ににじんでいた。本当なら泣き潰して終わるはずの今日が終わる。
「かのん君。あのさ、今日付き合ってくれてありがと」
「うん?」
「かのん君が色々連れ回してくれなかったら、私」
「いいの!」
かのん君が私の言葉を遮った。あ、また香るバニラの匂い。
「俺のわがままでもあるんだから。証明できたでしょ? 俺が真希ちゃんの元彼くんより真希ちゃんをキレイにできるって」
そう言って、ふわふわのクリームソーダの真っ赤なチェリーが私の唇に触れたのだった。
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