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居酒屋
そして終業後……今か今かと待ち構えている桜井さんに早速捕まえられ、居酒屋へとッ連行される。
「私、生。長田も生でいい?」
「あ、うん」
通された奥まった個室には桜井さんの発する熱気が満ちている。話しを聞かせろって言われても、私酔っ払ってたからな……なれそめを話せって言うんだろうけど、何を一体話せばいいのやら。私が頭を悩ませていると、スマホに着信が来た。
「あ、もしもし? かのん君?」
通話の主はもちろんかのん君。桜井さんがギン! とこちらを向いた。
「あー、真希ちゃん? 仕事終わった?」
「うん、終わったよ。今、新宿で飲んでるんだ」
「えー? そうなの? 一緒にごはんでもって思ったのに」
「ごめんねー、また今度……うわっ」
残念だけど、と断ろうとした途端に桜井さんのスマホが目の前にかざされた。
『かのん君を ここに 呼んで』
チラリと桜井さんを見ると、無言で親指を立てている。あー、まー私のおぼろげな記憶からなれそめ話をひねり出すよりいいか……。あとはかのん君次第。
「もしもし……あの、会社の人と一緒なんだけど、かのん君も飲みどうかな」
「会社の人?」
「そう、昼間に写真送ったでしょ、あれの横に居た……」
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