後編

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 彼女をしっかり抱きしめた。 「伊織、俺はお前にふさわしい男になる。そばにいてくれ。精一杯、守るから」 「涼くん……」 「頼む。今の状況だけで結論を出さないでくれ。お前が離れていったら、俺はどうすればいいのか分からなくなる」  伊織がこちらの肩に額を寄せた。 「ごめんなさい。不安なのは……私だけじゃないんだね」 「早くお前を安心させたいよ」  すると彼女は俺を見上げ、一途な眼差しを注いだ。 「心細いのは自信がないから。涼くんのことは信じられる。どんどん変わっていくあなたが、見えないところまで行ってしまったら、って思うと怖いの」 「伊織……」 「胸を張って、涼くんの隣にいられるようになりたい。今すぐにっていうのは無理だけど、でも」  伊織が愛しげにこちらの頬に触れた。 「がんばるから。待ってて」 「ああ。一緒にいてくれるよな?」  彼女がこくりとうなずく。俺は前かがみになって、相手の唇にキスをした。柔らかな感触に浸る。 「伊織……愛してる」
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