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彼女をしっかり抱きしめた。
「伊織、俺はお前にふさわしい男になる。そばにいてくれ。精一杯、守るから」
「涼くん……」
「頼む。今の状況だけで結論を出さないでくれ。お前が離れていったら、俺はどうすればいいのか分からなくなる」
伊織がこちらの肩に額を寄せた。
「ごめんなさい。不安なのは……私だけじゃないんだね」
「早くお前を安心させたいよ」
すると彼女は俺を見上げ、一途な眼差しを注いだ。
「心細いのは自信がないから。涼くんのことは信じられる。どんどん変わっていくあなたが、見えないところまで行ってしまったら、って思うと怖いの」
「伊織……」
「胸を張って、涼くんの隣にいられるようになりたい。今すぐにっていうのは無理だけど、でも」
伊織が愛しげにこちらの頬に触れた。
「がんばるから。待ってて」
「ああ。一緒にいてくれるよな?」
彼女がこくりとうなずく。俺は前かがみになって、相手の唇にキスをした。柔らかな感触に浸る。
「伊織……愛してる」
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