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枯葉のように渇いた、けれども生き物のように生臭い。 濃い鉄の臭い。 地に足を付ける者は、皆嗚咽を漏らしながら次はどこに向かうのかと、首や足をフラフラとさせていた。 そんな地面に私は倒れこんだ。もう身体は動かなかった。なのに、不思議と眼球はギョロギョロと動く。脳はキリキリと働く。 視界に入るものを見て、くだらないことを色々と考えた。 嗚咽は、臭さからではなく、このつまらない時間に対する疲れからではないか。 皆、この戦いに、人を殺すことに、目的を探す旅をしているかのようだ。 皆迷っている。終わりの無い旅で、得体の知れない何かを探している。 退屈だ。だが、始めから退屈だったわけではない。車窓にぶつかる雨の雫を眺めているうちに、次第に堆積するような退屈。 身体のいたるところに心臓か配置されたかのように、さっきまでビクンビクン脈打っていた痛みも、慣れという鎮静剤に押し負け、ただただ、終わりを迎えている、という感覚だけが虚しく取り残された。 案外、人って最後はこんなものなのではないか。身体は脳だけを機能させ、最後を迎えるその瞬間まで思い出に浸る時間を確保してくれる。過去を振り返る時間は人それぞれで、急激に死を迎える人は走馬灯のように速く、僕のような場合は、アルバムを一ページずつ丁寧にめくるように。 ああ。 僕の思い出といえば……。 家族がいた。両親と僕の三人家族。 僕のアルバムのページがめくられる……。 そんなことを考えていた。
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