46人が本棚に入れています
本棚に追加
(03.)
なんの変鉄もない普通のマンションの一室、自分の部屋のなか。
隣の部屋が先ほどから煩くて仕方がない。
大きくはないが、こちらの壁に何度となくぶつかる音がしたかと思うと、雄叫びみたいな叫声まで耳に入ってきて騒がしい。
「ああ……もしも僕が美少女だったら、下心無く裕璃と接することができるし、裕璃以外の女友達だってつくれるのに……はぁ」
ーーやめッ!
なにやら雄叫びに近い叫び声と、ガタガタとした椅子が思い切り倒れるようなけたたましい音が響く。
「え……?」
今度は明らかに聞こえた。
しかも、やめろと懇願する声がしたと思えば、今度は誰かが倒れるような音。その後、煩かった音は、うんともすんとも聞こなくなってなったのだ。
き、気になる。
「だ、大丈夫ですかー?」
壁をノックする。
壁の向こう側、隣の住人には届かないだろうけど、なんとなく声をかけてしまう。
「え?」
そのとき、目の前にある壁の中から、目には見えない“なにか”が涌いて出て来るような“気がした”。
そう、気がした、それだけだ。
でも、それが、僕の全身を覆い尽くすのが身を通してわかる。
その瞬間、脳裏に異能力の知識が一部、濁流のように入り込んできた。
最初のコメントを投稿しよう!