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「これで……裕璃のことをうじうじ考えないで済む。僕は女になったんだから、友達に彼氏ができただけだと考えることにしよう」
……でも、どうしてだろう?
絶世の美少女とまで呼べる存在になれたのに、僕は相変わらず、裕璃について思考することを、完全にやめることはできないでいた。
胸の奥にトゲのようなものが刺さり、小さく、でも、たしかに、チクチクと痛みを発していた。
「豊花ー? もう帰ってきたのー?」
姿見のある洗面所に母さんが入ってきた。
「あれ……え……ええっと……あなた、だれ?」
すっかり忘れていた。
「ぼ、僕だよ、僕、豊花」
「はぁあぁ? あなたねぇ? 豊花は男なのよ? それわかって言っているの? まさか泥棒!?」
「ち、違うってば! 正真正銘、杉井家の豊花だよ! 子供の頃から『女みたいな名前』ってバカにされてきた豊花本人!」
どうしようどうしよう!
どう説明すれば母さんは納得してくれる!?
「なーにが豊花本人、よ! 豊花なら股関にある息子、見せられるわよね? あなたの場合、どっからどー見ても息子はいない! あなたの股には娘しかいないじゃない!」
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