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額から冷や汗がだらだらと流れ落ちていく。
自宅の自室の中、僕はベッドに寄りかかりながら、腰にブランケットを巻いて下半身を暖めていた。
湿っていて気持ちの悪い股間の水気をなるべく無視し、ストレスが溜まらないように我慢する。
お、お腹が、痛い……。
だれかが下腹部を鷲掴みにして捻り取ろうとしているような、独特な痛みが襲いかかる。
「~っ! もう無理! 自分から頼んどいてなんだけど! もう無理! ギブアップするから許して! こうまで予想外の出来事が発生するなんて思わなかったし、痛かったり辛かったりするだなんて思いもよらなかったんだ! だから、だから僕を元に戻してくれ! お願いします!」
だれもいない虚空をめがけ、僕は必死に祈りを捧げる。
しかし、一回目のときは安易に叶えてくれたというのに、二回目となる今回の祈りについては、叶えてはくれないようだ。
脳に直接だれかが語りかけてくる。
ーーもしも辛いなら、その身体を放棄すればいい。
「ほ、放棄?」
ーー肉体・幽体・霊体、それらすべてを私に譲ってほしい。そうすれば、君という存在は世界から消える。もう苦しまずに済む。なに、単に君という意識が私に成り代わるだけで、外見の変化はない。私が君になるだけさ。私が君の身体を支配するだけさ。だから安心して、意志を無くして意識を譲ってほしい。
ーーさあ、苦しみたくないなら、さあ早く!
「……意識を……譲る?」
苦しみと自分の全ての身体を天秤にかける事態に陥ったのは、ある日、自宅で冗談混じりに、ある事を祈ってしまったからである。
あの日、あんな事を祈ってしまったのは、僕にとって衝撃的な出来事があったからだ。
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