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部屋着のジャージのまま、真夜中の住宅街を走り抜け、気がついた時には、大きな川の河川敷に寝転がっていた。
十七歳なのに、二年以上まともに運動をしていなかった僕の肺や筋肉は、もう限界を迎えている。その癖、直ぐに動き出したい衝動に駆られる。
人間とは、現金なものだ。
いざ自分に時間が無いと思ったら、こんなに焦るのだ。今まで散々怠けていた癖に。
息が整った瞬間、また走り出した。行く先なんて分からない。ただ、止まっていたくない。
時間が、もったいない。
何かせずにはいられない。
それからしばらく、夜中に家を抜け出しては走り回る日々を過ごした。
しかし、それもまた何も産まない行為だと悟る。
くやしい。悔しい。口惜しい。
このまま死ねるか。何もせずに死ねるか。
せめて、せめて普通に、人並みの人間として死にたい。
それから、手当たり次第だった。
大検合格を目指し、勉強した。予備校にも通わせてもらった。年齢制限のない資格も取った。何とかして現世に名前を、生きた証を残したかった。
親たちは涙を流して喜んでいた。胸が痛かった。
父さん、母さん。ごめん。
俺が頑張っているのは、死ぬのが判ったからなんだ。
決して更生したとか、改心したとかじゃないんだ。
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