ババネコ回顧録

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 でもこの最高のパートナーに挨拶をしないではいられなかった。この家に貰われてきて最高に幸せだったよと。貴女は本当にいいおばあちゃんだったよ。だから今こんなに沢山の孫たちに囲まれ最期の時を迎えられるんだよ。貴女は立派に人間を育て上げた。素晴らしい人生だったね。お疲れ様……。  私はおばあちゃんの頬を舐め、残っている力を振り絞り「ミャー」と鳴いた。 「ミャー……」  おばあちゃんの口から一言こぼれ落ちた。ここ何年も物を言わなかった口から言葉が発せられた。娘たちも孫たちも大いに驚いた。  しかしその言葉を最後におばあちゃんは呼吸を止めた。  花に囲まれた立派な祭壇の真ん中で、若かりし頃の久実おばあちゃんが笑っていた。何故か今日私の体調は良かった。目もまあまあ見えるし耳も聞こえる。  今日は私も参列者の一人としてこの場に連れてきてもらった。  黒い服を着た親戚一同が小さい四角い箱に入れられたおばあちゃんを前に思い出話をしていた。  そんな中、おばあちゃんの長女が話し始めた。 「おばあちゃんは戦争で両親を無くして苦労したらしいの。でも苦労した話なんて何もしなかったわ。ただお母さんと暮らした田舎の村の話は良くしてくれた。あの頃が一番楽しかったって。死にかけた子猫を拾ってきて飼ったんだって。自分たちの食べるものにも困っていた時代だったけど、その猫は鳥や蛇を獲ってきてくれたんで助かったって言ってたわ」  え、何処かで聞いたような……。     
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