街娘シルビア

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街娘シルビア

東の空を星が流れた。 街には、粉雪が舞い始めている。 闇夜をギィン…と重く剣のかち合う音が響き、 銃と馬のいななきがした。 黒装束の仮面の男は、古びたマントの老婆を背に軍人と闘っていた。 どちらも剣の腕が立ち、引けを取らない。 踏み込んだ軍人の剣は、仮面の男の腕をかすめ血が散った。 即座に剣は、男を捕らえたかに見えたが、 ひらりと彼の肩を飛び越え、男は、三、四人の隊士達を一気に蹴散らし、 白馬を呼び寄せ老婆を乗せ、駆けだした。 「追え! ネロを追え!!」 配下の隊士達が追跡するのを見送りゲオルクは、呟いた。 「あれがネロか…」 「ゲオルク大尉」 黒髪に紫暗の瞳を持つ男は、部下に振り返った。 「マルコ軍曹、何かわかったか」 「はい。あの老婆のいた宿を突きとめましたであります」 「ご苦労。なんという宿だ?」 「サンタコスという宿であります。サンタコス…? ん? どこかで聞いたような…」 マルコ軍曹は、不思議そうに顔をしかめた。 「よし、反逆者どものアジトかもしれん。全員捕獲しろ。 刃向かう者は、殺してかまわん。許可する」 「はっ!」 上官に敬礼しながらもマルコは、憂鬱になった。
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