街娘シルビア

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「ちょっと軍曹、なんであたしが牢に入れられるのよ」 深い青の瞳に金髪の少女シルビアは、 気の強い口調で、牢の中からマルコに詰め寄った。 外出の帰りを軍に連行され、シルビアはマント姿のままだ。 「すまん、シルビア。お上の命令でな。 お前の宿屋にいた老婆が軍の追う賊の一味かもしれんのだ」 「うちのお客さんが賊の一味?」 「そうだ…」 マルコ軍曹は、人のいい男でシルビアと懇意である。 申し訳なさそうに眉を下げ、肥えた体を丸めて項垂れる。 つまり自分も、軍の反乱分子と思われての牢入りか。 疑わしき者は、皆抹殺というのがこの軍のやり方だ。 シルビアは、ゾッとして息をのみ軍曹に尋ねた。 「老婆って誰なの?」 「あぁ、コルレオーネという女だよ」 「コルレオーネ? 彼女は、旅一座の芸人よ。 確かこの国の人でもないけど、本当に賊の仲間なの?」 「そういう通告があったんだ。それにな? 事実ネロが現れて老婆を連れ去って逃げたんだ」 「ネロ? あの盗賊が!? なんでそんなこと…」 「わからん。お前が賊の一味とはわしも思わんが。命令でな」 「そんなぁ。軍曹、うちの酒場に軍の隊士達が来てるのも知ってるじゃないの」 「あぁ、わしもつらいんだ。すまん」 「なにをしている」 「!」 シルビアとマルコ軍曹の会話を聞いていた第三者は、話しかけてきた。 カツカツと靴を響かせ、近づいてきたのは…。 「これは、フェルナンド少尉…」 近づいてきた小柄な少年に軍曹が敬礼をする。 「少尉? この少年が!?」 「こら! 口を慎まんか」 見たところ17歳のシルビアより年下の幼顔に思わず口走っていた。 「きゃんきゃんと威勢のいい女だ」 まだ声変わりしてないのか、それとも地なのか? 話すと一層幼さが感じられる。 軍の昇格は、年齢ではなく実力と聞いたが、 妹のエリーゼと同じ14歳ぐらいか。 「マルコ軍曹、鍵をよこせ」 「この娘を牢から出しますので?」 「司令官が連れて来いとの命令だ」 「司令官が?」 目を丸くする軍曹から鍵を受け取り牢に入ってくると、 フェルナンドは、シルビアを見つめた。
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