街娘シルビア

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先ほどまでの軍曹との態度とは違い、 シルビアは、警戒から一歩後ずさった。 司令官がじきじきに街娘と会う? 一体どうしたことか? シルビアは、警戒しながらも少年少尉に従った。 当然両手首は、縛られ拘束される。 「司令官、失礼します」 「入れ」 軍幹部の私室。 書類に目を通していた男は、顔を上げご苦労と少尉に告げた。 「少尉、下がってよい」 「はっ」 二言三言、言葉を交わすとフェルナンドが部屋を出た。 司令官マクラーレン。 歳は、30代前半かまだ若い。 刺すような冷たい目をしている。 シルビアは、警戒しつつも、マクラーレンを見つめ、 マクラーレンは、シルビアの気品と美しい容姿に一瞬目を見開いた。 「お前が宿屋の娘か」 「……」 「答えよ」 「そうよ」 鮮やかな深い青の奥に怒りが見える。 「そう警戒するな。話があるだけだ」 「話?」 男の声は、努めて穏やかになった。 「お前の親は、宿屋を営んでいるな。だが不在でお前だけが帰ってきた。親は、どうした?」 「テスタロッサのぶどう農園へ行ってるわ」 「ほぅ、確かかね?」 「確かよ」 「では質問を変えよう。ネロという賊を知ってるな? 我々は、その賊を追っている。 お前の宿屋にいた老婆は、ネロの仲間の一味と連絡が入った」 「その事は、軍曹から聞いたわ。コルレオーネは、ただのお客さんで彼女が賊であっても、 私と私の家族には、何の関係もありません」 「一切無関係、それを証明できるか?」 「……それは……」 「できぬなら、しばらく牢にいてもらわねばな」 「!」 「お前には、潔白を証明できるものがない。今、帰すと、 こちらの動きを外部に漏らされても困る」 「…… わかったわ」 「なに、君の潔白が晴れたらすぐ釈放するとも。 善良な市民であるなら、だがな」 「………」 「失礼します」 その時、ドアがノックされた。
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