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「古い建物とはいえ角地の最上階だ、結構掛かるんじゃないのか」  後藤はなんだそんな事かとでも言うように、壁に背中を預けながら言った。 「ああ、確かにフリーの分際でこんないい立地の部屋には『普通』住めないがね」  そう言って後藤が俺に耳打ちした月々の家賃は驚くほど安い金額だった。  俺を隣に座るように促して後藤は続ける。 「この部屋はビルの一番奥にある部屋なんだ。窓を開けたら路地を挟んですぐ隣のビルに隣接してる有様でね、つまり日当たりは最悪、しかもなまじ最上階なものだから日常的に行き来するには不便極まりない。たぶん倉庫か何かに使う為に貸し出されてる部屋なんだろうね」  後藤はそう言いながら俺が手土産に持ってきたウィスキーのビンに興味津々だ。部屋を見渡すと確かに部屋の奥に備えられている窓はガラスの向こうが何かで塞がれているように真っ暗だ。これでは昼間でも採光の役目は果たせないだろう。 「でも、それにしたってさっきの金額は安すぎないか?」  俺がそう言うのを予想していたように後藤は言った。 「そう、この部屋はいわくつきなんだ」     
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