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「山下君。いい感じだったよ」
うなだれて座るオレに声をかけてくれるのは毎回中嶋だけだ。
「ありがと」
モテに歌唱力が有効なのは当然分かっていた。
高校のころからヒトカラで必死に練習し、平均70点台だったのを85点以上キープ出来るまでに努力したのだ。
カラオケの採点機能で85点以上なら決して下手ではないとネットに書いてあった。
だから顔は中の上なオレだけど、話上手でオシャレで歌もそこそこなら余裕でモテるはずだったんだ。
なのに飯野の歌は半端なかった。
大きなボディから出る声は心地よく響き、バラードからヘビメタ、アニソンまで完璧に歌いこなした。
95点以上は当たり前で、最高98.768点をたたき出していた。
どうやら絶対音感があるらしい。
そういうのは先に言っといてくれ!
初めての合コン、二次会は飯野の独壇場になった。
だから二回目からはカラオケは止めようと考えてたのに、飯野の歌声はあっという間に評判になってしまっていた。
なんなら飯野の歌を聴きたいがために、知らない女の子からオレに連絡が来ることもある。
「やっぱり飯野君の歌は素敵だね~」
そう言って拍手をする中嶋はハッキリ言って音痴だ。
60点くらいは出せるが50点台を出した時は無理して歌わなくていいんだぜ、と思わず言ってしまった。
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