8人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
そんな中でも合コンは開かれ、いつもの光景は変わらずだった。
以前の中嶋を知っている女の子は頑張ったね！ と中嶋に抱きついたり、頭を撫でたりした。
でもオレはやっぱりスルーされる。
そもそも誰もオレの歌の記憶がないのだろう。
自分で言ってて悲しくなる。
だがオレには彼女が出来た。
同じゼミの女の子でゼミでの飲み会にも来ず話したこともほとんどない子だったが、偶然ヤギのいるカフェで会ったことがきっかけで仲良くなった。
『ヤギが好きなんて珍しいだろ？ オレ山羊座だから』なんて話しかけたら、私も山羊座なのと返って来た。
そこから山羊座あるあるトークに花が咲いたのだ。
山羊座には山羊座にしか理解できない陰な部分がある。
そこを分かち合っているうちに何だかイイ感じになったという訳だ。
一人の女の子をめいっぱい幸せにするのも悪くないと思ったオレは、まだフリーの二人には申し訳ないが合コンを卒業すると決めた。
飯野は最初からモテたい訳じゃなかったようで特に異論なくあっさりと承諾してくれた。
中嶋はカラオケ修行も終わりだね、と少し残念そうに笑った。
結局二人で必死に半年以上頑張ったがオレは92.031点、中嶋は84.839点が限界だった。
今思えばなんてバカバカしいことに時間と金を費やしていたのかとも感じる。
でも楽しかった。
中嶋という親友もできたし。
飯野とはもうあんまり喋ることもないかもしれないが、中嶋とは歳をとってもこの想い出で一杯やれるだろう。
最初のコメントを投稿しよう！