プロローグ

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でもここでわたしがあえて語っておきたいのは、色こそ地味だけど万能野菜のじゃがいもの存在だ。 このふっくりした完璧なフォルムはどうだろう。 中身がぎゅうっとつまっていて、それでいて火を通せば、歯ごたえとともにサクふわな食感が得られることはお約束。 ああ、こんなに素晴らしい野菜を使って料理ができるなんてとっても幸せ。 うちの家庭菜園で取れる野菜が世界一だと心得ていても、これだけの逸材を前にするともう……。 「蒼(あおい)! お前はいったいいつまでそうやって野菜とたわむれてんだよっ!」  野菜の山をかき割るように、わたしよりちょっと太い半そでTシャツの腕が、テーブルの真ん中にダンっと音を立てて載せられた。 さっきまで高校の制服のままだったのにいつの間に着替えたんだろう。
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