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「イチ……」
両手にパプリカ! のままわたしは斜め上にあるイチの顔を、ほへっ? と眺めた。
ベジタブルドリームから現実に戻ってこられず、不覚にも一瞬イチに見とれる。
相変わらずきれいだ。
テーブルの前に座るわたしを見下ろすくりっとした二重瞼。
そのすぐ下から形のいい顎にかけての頬の曲線はやわらかく、ひたすら優美で甘い。
十六歳男子にしては幼いくらいで、まだわたしと一緒の布団にくるまって眠っていた幼稚園の頃の面影さえ残っている。
「俺も一緒に作るぞ。蒼に任しといたんじゃ野菜野菜野菜のオンパレードだ。こちとら高校二年の食い盛りだっての」
「はぁ」
「蒼の野菜偏愛は警戒レベルだな。ほらまずこっち!」
わたしからオレンジのパプリカを乱暴に取り上げると、代わりに銀色のトレイに載った三枚の立派なステーキ肉をずいっと目の前につきだされる。
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