プロローグ

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「えっ! なにこれ、めちゃくちゃすごくない? これも〝宵月〟から届けられたの?」 「そう。あっちに魚介もあるぜ」  視線だけで冷蔵庫を示す。 「すごいね。春日部くん」  〝宵月〟というのは産地にこだわった高級創作和食の先駆け的なお店で、イチの親友の春日部大和くんのお父さんがオーナーだ。 フォネツのご飯会(通称ホネ会)の時にほぼ毎回食材を届けてくれる。 前日の野菜が多いらしいけど、どれがそうなのかわからない。みんな充分新鮮だ。 「フォネツに大和がいたのはラッキーだったな」  そこでイチは唇の片端だけをあげる笑顔を向ける。 こんな笑み、たいていの人がすれば嫌味ったらしく見えてしまう。 でもイチがすると、それさえとろけるような甘さをかもしだすのだ。
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