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「・・・・・はっ! いつのまにか、寝てたわ。――あなた、誰なの?」
絆はPOSレジの上に見える、妖精のような小さな少女に気づいて話しかけていた。
「AIの妖精、ルナで~す」
と軽い感じの返事が返ってきた。
「うん? AI? 人工知能とかいうやつ? このPOSレジ、そういう機能が付いてるの?」
絆は眠い目を何度もこすりながら、そういう解釈をした。
「まあ、そんなところです。え~と~、あなたの願いは何ですか?」
「うーん、それはねえ。か・・・・じゃなくて、このコンビ二が流行って生活が楽になることかな。このままじゃ、私の両親、死んじゃうよ」
絆は本当は彼氏が欲しいといいかけて、少し考えて、やっぱり、両親のことを考えた。
「お安い御用です」
ルナはPOSレジをハッキングして、あるデータを書き換えた。
それは廃棄食品のロスチャージと呼ばれる特殊会計システムだった。
「はい、これで大丈夫ですよ」
「え? もう終わったの?」
「うん、明日から売上げも利益もバンバン上がりますよ」
ルナは右手を高く上げるポーズでいう。
「ほんと。嘘でしょ?」
「明日も深夜三時に、ここに出てくるので、今日一日楽しみに過ごしてみてね」
「うん、まあいいか。小さな妖精さん」
絆も疲れが溜まっているので、とりあえず、納得することにした。
「では、バイバーイ!」
手を振りながら、ルナはPOSレジの上から夢のように姿を消した。
AIの妖精と名乗るルナの最初の魔法はそうやってはじまった。
絆は今日の夕方には最初の奇跡を見ることになる。
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