おにぎり 第一章 コンビニ家族編

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おにぎり 第一章 コンビニ家族編

「おにぎりが売れ残ると何故か赤字になるのよねえ」  母親の村上妙子(むらかみたえこ)がいう。  7の文字が入った茶色のコンビニの制服を着て、お弁当コーナーの品出しをしている。 「この前、SV(スーパーバイザー)さんに訊いたら、ロスチャージというコンビニ独自の会計システムだと言ってたけど、父さんには難しすぎてわかんないよ」  父親の村上春樹(むらかみはるき)は難しそうな表情をしていた。  彼はおでんのたねを補充している。  今年、十三歳になったばかりの村上絆(むらかみきづな)こと、この物語の主人公は何だかおかしな話だなと思いつつ、忙しいコンビニのレジを必死に打っていた。  村上一家が脱サラしてコンビニ経営をはじめて半年になる。  両親は必死に働いていて、たまにバイトがいない金曜日の夜などは24時ぐらいまで、絆もコンビニのレジを手伝っていた。  両親の話では開店セールで好調なため売上げが月800万あるのだが、土地、建物、備品、什器などのローンなど諸々引かれると、手元には月20万円ほどしか残らない。  年収では300万ぐらいである。  SV(スーパーバイザー)さんの話では、クリスマスとかバレンタインなどの催事品とか、ファーストフードやコーヒーなどの利益率の高い商品を売れば、利益率も年収もアップするというのだが、家族の生活はいっこうに良くならないでいた。  何かがおかしいと母親の妙子も気づきはじめていて、絆も毎日、売れまくっている弁当に何か秘密があるのではないかと疑いはじめていた。  ただ、父の春樹は全く分からないようで、絆だって何がどうおかしいのかははっきりと言えなかった。  そして、その日の深夜に、絆の疑問が氷解する出来事が起こることになる。    
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