横溝家の一族

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「――お待たせいたしました。それではご紹介させていただきます」  僕が通されたのはこれまただだっ広く、控えめながらも所々凝った装飾の施された豪勢なお座敷であった。  そこでしばらく正座して待っていると、美熟女に連れられて横溝家の人々が入って来る。  双子だろうか? 正面の上座には見分けがつかぬほど瓜二つの腰の曲がった老婆が二人、ちょこんと正座して座る。  その右手には美熟女、そして、左手にはなぜか真っ白い不気味なゴム製のマスクをかぶった若い白シャツの男性と、赤い振袖にパッツン黒髪の日本人形のような超絶美少女が着座する。  もう、ツッコミどころ満載でどこから触れていいのかわからない。 「こちら、主人・要蔵の双子の叔母で小竹さんと小梅さん。申し遅れましたが、わたくしは要蔵の妻で松子と申します」  皆が腰をお落ち着かせると、美熟女――どうやら奥様だったらしい松子さんは早々に家族の紹介を始めた。 「ど、どうも。今度、となりに引っ越して来た金田の息子の金田一孝です。よろしくお願いします」 「ほお、そうかい。そうかい」 「それはご丁寧なことで」  慌てて僕も挨拶をすると、双子の老婆は身じろぎもせず、まるでロボットかカラクリ人形のように口だけを動かして順々に言葉を返す。 「それから、先程お会いしたと思いますが、こちらが息子の佐清です」  続いて松子奥様は、どこか艶めかしさを感じる眼差しで白いマスクの男を示してそう告げる。  ああ! さっき池で「V」の字になってた人か! で、でも、どうしてこんなマスクを……気になるけど、訊くに訊けない……。 「スケキヨデス。コンナモノ、カブッタママデ、スミマセン。チチオヤニ、チョット、カオヲボコボコニサレタノデ……」  だが、疑問に満ちた僕の眼差しに気づいたのか、白マスクをかぶった佐清さんは聞き取り難いしわがれた声で自らその格好のことを釈明した。  いや、顔をボコボコにされるて……さっきの池で逆さまになっていたのといい、いったい父親との間に何があるっていうんだ。
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