安達祐実の大ファンだっ!

2/7

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 だが、もしも安達祐実と道でバッタリ出会ったとしたらどうだろう。だからそんな事は無いって。驚喜乱舞して(もうよせよ)そこら辺を走り回るかも知れない。あげく車道に飛び出して車に撥ねられてしまうかも。それこそがファンのあるべき姿だろう。  けれども私が夢中になっているのは二十年前の安達祐実である。だから彼女のファンだというのは微妙な表現になるのかも知れない。なぜなら現在の彼女のことはほとんど知らないからだ。  しかしそれは大した問題じゃ無い。私が安達祐実のファンであることは間違いないのだ。今ではあの「家なき子」の様々なシーンからお気に入りの彼女の表情をスマートフォンに登録していて、しょっちゅうそれを眺めながら幸福感に浸っている有様だ。これって肖像権の問題があるのかな。あるんだろうな、やっぱり。でもそんな事は気にしないのがこの老人なのだ。あまり上品な人間では無いな。 「どうだ、可愛い子だろう。」 職場でバイトの学生に見せた。 「めっちゃ可愛いですね。誰ですか。」 「これはな、二十年前の有名なドラマで主演した女の子で、名前をとくに教えてやってもいいが良く聞けよ。なんだもういない。」 若い者はせっかちでいけない。二十年前と言ったのがいけなかったな。あれで興味を無くしたんでは無いだろうか。せっかく安達祐実のことを聞かせてやろうとしたのに。…彼女のことを誰彼となく熱く語りたいという、もう訳の分らない感情にとらわれているのだった。     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加