安達祐実の大ファンだっ!

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「安達祐実BAR」というのがあれば良いなと思う。そこは彼女のファンが人知れず集まる店なのだ。一番乗りは私だ。年寄りは時間の感覚が疎いのか。店主がまだ開店の準備をしているが何の文句も言わずにいてくれる。彼も家なき子の大ファンなのだ。同じ価値観を持っているのだ。何処までも寛容になれるはずだった。  店は昔の西部劇に出てくる小さな酒場の雰囲気だ。床は板張りで、細長いカウンターがあり、中央には丸いテーブルとそれを囲むように椅子が置かれている。全て木製で飾り気が無い。  次に入ってきた客はカウボーイだ。腰に二丁拳銃を下げている。シャツの首まわりと脇の下に汗が滲んでいる。家なき子を語りたくて砂漠を越えてやって来たに違いなかった。  続いてチャコールグレーのスーツを着た男だ。白いシャツの胸のあたりにフリルがあってエンジ色の蝶ネクタイをしている。紳士のようでありながら、何処か崩れたムードを漂わせている。彼はカード使いなのだ。つまりポーカーの相手を見つけてはイカサマ技を駆使して金を稼いでいるのだ。  最後にサラリーマンがやって来た。小太りでジャケットが窮屈そうだ。もう仕事は終わったとばかりにノーネクタイだ。この男は言い出したら聞かない頑固さを持っているがその実小心者なのだ。  私は焼酎のコップを手にしている。カウボーイはバーボンだ。カード使いは気取ってスコッチ。サラリーマンはカシスなんちゃらというカクテルだ。男ならマテニーくらいにしておけとは思っても、そこは同じファン仲間、余計な事は言わない。     
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