1人が本棚に入れています
本棚に追加
二人は安達祐実の共演者なのだ。保阪尚輝は家なき子1に、堂本光一は家なき子2に出演している。
その事を知らない客が「いったい何の話?」などと言おうものなら店主の態度はガラリと変る。
「その辺に座っていいぞ。」とカウンターの隅を顎で差す。
客が飲み物を注文すると渋々ビールの小瓶をその前に置いた。
「コップが無いんだけど。」客が戸惑って訴える。
「口があるだろう、口が。」と瓶から直接飲む仕草をして見せた。
それがこの店のスタイルなのだと客は一応納得したようだったが「つまみが欲しいな…。」と口にした。
店主は舌打ちをして小さいビニール袋を乱暴に置いた。ピーナツの文字が見えた。店主はテーブルに戻る途中でふと立ち止まって客を振り向いた。
「帰るときには金をカウンターの上に置いていってくれよ。」と不機嫌な様子で告げた。
テーブルの客達はそんな店主の態度を落ち着いて見守っていた。家なき子を知らない客には当然な振る舞いだと感じていた。いや、むしろ知らなかったのは運が良かったといえる。これがもし「ああ、あの家なき子か、所詮は子供騙しだね。」などといい加減なことを口にしようものなら、この男をどのような酷薄な運命が待ち受けていたか想像するだけで恐ろしい。まずカウボーイの二丁拳銃が黙っちゃいないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!