3/11
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「もしかしたら昨日の今日で退会届を会長に提出してたりして」 「そしたら残念だなあ。せっかくの目のオアシスが、後姿とうわさ話で終わっちゃうなんて」  彼女たちが夢中になる男子の姿を全く覚えていない私は、適当に相槌を打った。本当に佐藤先輩に気圧されていたら、残念ながらもう二度と会わないかもしれない。文芸部のオアシスを少しでも見てみたかった。  しかし、そんな心配は無用だった。なぜなら、彼らはきちんとサークルに顔を出したから。  文芸部は一応活動の一端として公募か文壇の研究発表を必須としている。ジャンルは問わないし媒体も問わないが、所属するものは年に二度作品か研究を発表する。作品を提出するひとはまれで、大体がゼミの研究の延長のような発表をする。そこで、私たちは秋に発表するための対象を、サークルの部室に眠る先輩方の秘蔵レポート集をひっくり返して考えていた。  そこに、コツコツ、とノック音。一人が「どうぞ」と声をかけて入ってきたのがその男子二人だった。  二人は昨日のお礼と佐藤先輩への無礼を詫びに来たのだという。文芸サークルをやめようとは毛頭考えておらず、今日は加えてサークル内容にも触れればいいと思っていたとか。     
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!