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懺悔
私は家に着くと、静かに重い扉の鍵を差し込んだ。ガチャン、と無機質な音を立てて鍵が回る。そのまま硬い扉を押し開けて、部屋の中に入った。今日はいつになく気が滅入っていた。
外では月が冴えざえと光を放っている。透き通った空気に照らされながら、気分はさらに沈んでいく。こういう時は普通、例えば雨がしとしと降っていたりするんだろうな、などと思いながら荷物を放る。
こんな夜にこんな気分だなんて、酷く不釣り合いだろうか。……でも、どうやら私にとって今夜は、懺悔をするのにうってつけの日和なようだった。
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今日は同窓会だった。それに一応と出席してきた私は、打ちのめされていた。泣きそうなほど冷たいベッドに指を滑らせる。久々に会った友人たちは、皆耀いていた。
――私は貴方たちに遠く及ばない。相応しくない。視点が足りない。今までに学ぶべき全てのことから逃げてしまった。何も足りていない。充たしていない。逃げるべきではなかった。もう取り返しのつかない後悔が吹き荒れる。
言われなくても分かってるんだよ、自己評価が間違ってることは。自分の能力も多少は把握してる。それなりに評価されてるんだろうとは分かってるんだ。ただ受け入れられない。身体が受け付けない。納得いかない。だってこんな不完全なやつ評価する価値ないじゃないか。なら、否定するしかないじゃないか。
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聲にならないまま闇に溶けていく。涙ばかりが溢れ落ちる。泣く資格なんて持ち合わせていないのに。……嗚呼、嫌だ。厭だ。いやだ。間違いを理解しながら、認識しながら治せない自分も、大好きな貴方たちにこんなことを思ってしまう自分も。ごめんなさい。
いつもなら日記に書き殴るようなことが、脳内に溢れかえる。今日は駄目だった。書き付ける余裕もなかった。
浮かんでは消えていく慟哭が、涙と共に表れる。静寂の中に、私の泣き声だけが微かに響く。それにさえも罪悪感を感じてしまう。
親しくする楽しさも、関わる嬉しさも、気遣いという錘に相殺されて。考えすぎて断ち切りたくなる。ごめんなさい。貴方たちを騙し続けている。本当はそんな私じゃない。私なんて存在しない。虚が在るだけだ。罪悪感に身を抉られる。生きていくには仮象からは逃れられない。毎日要らぬ謝罪をして思いもしないことを言って。在りもしないものに縛られる。
月の周りに少し雲がかかって、美しい虹彩が見える。いつものっぺりとして見える空に、底知れない奥行きが感じられる。涙に濡れた眼で眺めれば、形容できない畏怖が身体を包み込む。
……このまま消えてしまえたら、どんなに楽だろうか。月と共に、夜明と共に、融けてしまえたら。
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愛する貴方たちへ。私の周りの、全ての物事へ。――精一杯、心尽くしの懺悔を。
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