無色透明の隣人

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無色透明の隣人

 私はいつの頃から「あの視線」を感じるようになったのだろうか。  初めは小学生の頃だった。  風に飛ばされた黄色い通学帽を追いかけ、小学校の正門から道路に飛び出しかけた私の腕を大人の手が掴んで引き留めた。帽子が飛ばされていく様子に思わず顔をしかめ、威嚇の声を上げながら腕を掴む手を払おうと身を捩った。  その時、私の目の前の道を、車が凄いスピード通り過ぎ走り去って行った。規定速度40㎞の標識が立っているのが見えているはずなのに、それをはるかに超えた速度で路の向こうへ消えて行った車のシルエットを見た私は半ば放心状態に陥っていた。  しばらくしてパニックから回復した私は、命の恩人にお礼を言おうと振り向いたが、その先には誰も居なかった。  そして、いつの間にか腕を掴む手の感触も無くなっていた。
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