無色透明の隣人

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 次は高校生になった頃である。  受験生になり、暗記や模擬試験の問題集に取り組んでいた私は、学校から自宅へ帰る途中の電車の中で参考書の記述や問題とひたすらにらめっこしていた。  ガタガタと音と共に揺れる車内の席の一角で難しい顔をして本にかじり付いていた私の周りには誰も座って居らず、思うまま受験戦士の時間を堪能していた私は、ふと、向かい側の席から微笑ましいものをみるような、やわらかでありながら存在感を感じる視線が自分に投げかけられている気配を感じた。  「誰がこちらを見ているのだろうか?」と無性に気になった私は顔を本から離して周囲を見回すと、慌てて荷物を纏めて電車から駅のホームへ降りた。  電車はちょうど自宅がある街の駅に止まっており、あと少しで発車のベルが鳴る寸前だったのだから。
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