無色透明の隣人

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 三度目は私が結婚式場に居る時である。  学生時代を無事に卒業した私は社会人になり、会社の慰労パーティーで出会った同僚の男性と出会い、そこから数年程のお付き合いを経て彼との結婚が決まった。  両親や周囲の同僚から祝福され、彼のご両親とも良い関係を築くことが出来た。  純白のウエディングドレスに身を包んだ私は、式が始まるまでの時間を粛々と待っていた。  今日まで、無事にこの日を迎えられた幸せと、それを与えてくれた人たちへの感謝と共に。  そうして感極まって涙をこぼしそうになっていた私の肩を、誰かが優しく抱きしめ、背中をさする感覚が私を包み込んだ。   ――結婚おめでとう。これからは旦那さんと幸せにね?  姿は見えず、声は聞こえないはずなのに、無色透明の優しい隣人は私に向けて、確かに形を伴った愛情を向けてくれたのだ。 「はい。私は愛する彼と共に生きていきます。今まで私の良き隣人でいてくれて本当にありがとうございました」  私は誰もいない空間に向けて、深くお辞儀をした。
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