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「今俺達が悪夢を断って、原因を話したところで、似たような夢が当分彼女の中に現れ続けるだろう。産まれてくるまでは気が抜けないからね。だから、夢として認識されないように、暫くの間封印する」  帯の上から巻いていたウエストバッグからは、赤い紐を取り出す。 「依頼書通りなら、俺達が水面のほうに浮上したら、夢は進行するはずだ。そして水草に引き摺り込まれ、首を絞められたら今日の任務は強制終了」  だから、と明日夢は一度言葉を区切る。 「鏡子ちゃんはこれを持って水面に上がってくれ。それで、この紐で金魚鉢の側面に沿って五芒星を描いて、各頂点には札を」  札を五枚と紐を手渡す。さらにバッグからガムテープを取り出し、これも渡した。 「先輩はどうするんですか?」  てきぱきと指示を出す明日夢に面を喰らいながら、鏡子は訊ねた。 「俺は、水草に引き摺り込もうとする奴を押さえ込む。先輩が引き摺り込まれないうちに、さっさと役目を果たすよーにっ!」  明日夢自身は、帯刀していた刀を抜いた。 「水面に上昇したら任務スタートだ。作業が終わったら大声で叫べ」 「はっ、はい!」  大きな声で返事をする鏡子に、明日夢はふっと笑う。 「それじゃあ、行くよ――任務、開始!」  掛け声と共に二人は同時に地面を蹴る。  鏡子は駆けるように水面へと上った。ビリッとガムテープを千切って、金魚鉢の側面に紐と札を貼り付けていく。     
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