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明日夢は刀を構えながら、水草を凝視する。息を詰めた。五感をきりきりと細め、集中する。
空気が変わる。水草が太い腕のように伸び上がった。
明日夢を捕らえようとしたそれを、刀で薙ぎ払う。
水草の腕は切られて仰け反った。しかし少しするとまたずるりと動き始める。けれど、動き出すまでに少しタイムラグがある。時間稼ぎにはなりそうだ。
「でもキリなさそうだなぁ……鏡子ちゃん早く頼むよー」
軽い口調で悠長にひとりごちているが、明日夢の視線は真剣である。
襲ってくる腕を何度か切り捨て、薙ぎ払った。
「終わりましたぁっ!」
水面の近くにいた鏡子が大声で叫ぶ。
「手拭いと丸薬準備して待機っ!!」
「はいっ!!」
叫びながら指示を飛ばす。水面のほうに上昇しつつ、水草の腕を切り付けた。動きが止まっている間に急浮上する。鏡子に渡さずに持っていた、残りの札を構えた。
「日の露払う明けの星、流れゆく須佐之男神」
言葉が紡がれると共に、構えた札が光を放ち四散する。それと同時に、紐と共に止められた札が発光を始めた。
「悪しき夢を共として、底の国へと鎮めゆけ!」
明日夢は、鏡子から差し出された手拭いを掴む。
「鏡子ちゃん、戻るよっ!」
「はいっ!」
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