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ほんの少ししてから、一瞬深く沈んだ意識は浮上した。
目を開けると、仄かに明かりで照らされた竿縁天井が飛び込んできた。灯る蝋燭が、ジジッと音を立てている。
「お疲れ様。今日は早かったな。どうだった?」
起き上がった明日夢に父、渡有彦が訊ねた。
「収穫なし。今夜は空振りだ」
「有彦さん。先輩、また食べてばっかりいたんですよー」
鏡子が起き上がりながら、有彦に言い付ける。
「うおっ!? 鏡子ちゃん、何言ってんのっ?!」
明日夢は鏡子のほうを慌てて顧みた。
「なにー? お前またか。朝食入らなくなっても知らんぞー」
呆れた顔で有彦は、息子を嗜める。
――……どっかで聞いたセリフ……。
明日夢は既視感を覚えながら、渋い顔をした。
――これ以上小言言われる前に、用件さっさと言ってずらかろう、うん。
そう心に決めた明日夢は、父に声を掛けた。
「――父さん。あとで夢主のデータ見せてくんない? 気になることがあるから」
「ん? あぁ、わかった。出しておくよ」
二つ返事で応じる父を横目に、明日夢は立ち上がる。
「よろしく。そんじゃあ、おやすみなさーい」
そう言うと、明日夢はひらひらと手を振って、部屋を出て行った。
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