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参
その日の夜。明日夢と鏡子は、父の有彦を前に敷かれた布団の上で正座をしていた。
布団が敷かれた六畳ほどの和室の四隅には、燭台が置かれ、その内の三本には既に蝋燭の火が灯っている。枕もとには香が煙をくゆらせ、室内はその香りで満たされていた。
任務にかかる前に、装備を確認するのは、何事においてもそうだが、大事な手順だ。
二人は袷から筥迫を取り出し、兵児帯に下げていた巾着と手拭を共に前に置いた。そして、筥迫の中から札を数枚、飴玉のように油紙に包まれた小さな球体を数個取り出す。巾着からは、これも油紙に包まれた長さは四センチほどで、鉛筆くらいの太さの円柱を取り出した。それらをすべて目の前に並べる。明日夢は今回、通常の装備に加えてウエストバッグを所持していた。そこからは、札と長い赤い紐とガムテープを取り出し、さらに兵児帯に細長く畳んで挟んでいた札を抜き、広げて置く。
明日夢の装備を見て不思議そうにする鏡子の横で、有彦はそれに目を細めた。しかし、装備に関して不可はないと下した。
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