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 学校ではほとんど寝ていた。学校が終わった今でもまだ眠気と若干の疲労感が残っている。今日はそのまま帰って寝よう。  アパートの駐輪場に自転車を停めて、部屋に向かう。僕の部屋は一階にあるから階段を登る必要がないので楽だ。郵便受けに手紙が入ってないことを確認してから、玄関の鍵を開けて部屋に入る。 「おかえりー」 「うわ!?」  そこには見慣れない光景が広がっていた。というか、見慣れない人がキッチンに立って料理をしていた。 「君ってビビりだよね」  手際よく野菜を切りながらアクのない笑みを浮かべる。 「人の部屋で勝手になにやってるの……」 「いやあ、私なりの謝罪の気持ち?」 「そういうことじゃなくてね」 「ちゃんと洗濯もしたし、掃除もしたよ」  ぜんぜんわかってない。疲れていてよかったかもしれない。疲労した思考と意味不明な彼女の行動は僕の知らないところで勝手に結びついた。 「あぁ……うん、ありがとう」  僕は靴を脱いで、リビングに向かう。リビングはものすごいきれいになっていた。あらゆるものが整理整頓されている。すごいじゃないか。これなら悪くない。  僕は満足してベッドの端に腰をかける。心なしかベッドもふかふかだ。ベッドの下もきれいになっている。抜かりないな、と思っていると僕はあることを思い出した。もう一度ベッドの下を覗く。  ない。一気に動悸が荒くなる。なにが悪くないなだ。ベッドの下には大事なものがあった。それがなくなっている。僕の秘蔵コレクションだ。まさかこんなことになるとはいざ知らずセキリュティの甘いところに保管してあったはず。それを見られてはまずい。 「あぁ、あと君のベッドの下にあった『熟年上司と淫らな温泉旅行⑩』っていう本はタンスの奥にしまっておいたから」 「うわぁぁぁぁぁぁあ!」  拝啓、お父様お母様。たいへんです。ベタです。ベタな展開です。会って間もない人に性癖が暴かれてしまいました。恥ずかしい……。
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