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そういった一連の作業をしている間、アリシアは今回の出来事についてイサムに聞いていたのだった。
「……つまり、イサムさんは勇者という職業で、ウチの森役場から人間の都市に勇者の派遣依頼があったからやって来たのですね」
「そういう事」
軽く肯定すると、沸かして余った白湯をやはり備え付けのカップに入れて、アリシアと自分それぞれの前に置いた。このカップは神樹製ではないが、他ではあまり見かけない竹製だった。全て神樹製にせず、ところどころあえて外す事で、部屋のアクセントになっている。
「はい、お白湯」
「ありがとうございます」
備え付けの袋入り茶葉は使い切っていたようだ。連泊のお客様に対して、サービスの充実をはかる必要があるかもと考えながら、白湯を一口すする。
「その依頼内容が、ここ大樹の森に封印されている邪霊の討伐で、封印が解かれる細かい時期が分からないから早めに来てもらっていた、と」
同じく白湯をすすりながら頷くイサム。
「しかし、この森には宿泊施設という概念がそもそもなくて、唯一泊まれるこのアパートを日割りで利用したわけですね」
「正解!」
「そうなると、仕事が終わったら支払うという宿泊費は、もしかして」
いやな予感がするアリシアは、竹カップに残った白湯を一息に飲み干す。
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