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「なぁなぁ、お前さ……」
私が窓を眺めていたら、隣から声をかけてきた。
毎日こんな彼は、どうやらお喋り好きらしい。
「なにー?」
内容の濃淡に関わらず、相槌を打って聞き入ってしまう私も、聞き好き、といったところか。
発端はシンプルで、席替えで隣の席になったことだ。初めての接点である。
コミュニケーションはわりと苦手な性格ゆえ、最初は緊張していたものの、‘超’フレンドリーな彼を相手に、瞬間杞憂となった。
それにしても、彼は話題が底を尽きないようで、特技や趣味といったところから、日常の小さな発見、クラスの人々の話、時折ちょっとした相談や愚痴なんかでも言い合って、盛り上がった。
実は私の毎日の楽しみである。……絶対言わないけれども。
彼はとにかく話が上手で、話す速さや語尾がすーっと私にフィットする。聞いてて心地よい。
うん、見習おう。
そんな楽しい時間ほど、過ぎるのが早いのは自然の摂理で。
ある日、ホームルームでそろそろ席替えをするって先生が言った。もうそんなに経ったのか。
彼と、離れちゃうなあ。きっと。
そう思ってた矢先、声をかけられた。
「明日席替えじゃん?離れるかもだからさ」
ん?話しておきたいこと?
「ああ。席が離れても、これからもずっとお前の隣にいて、喋り合いたいなあって。……それだけ」
そうか、これからずっと……ねぇ。
「ふふ、私もこれから毎日、話聞きたい。楽しみにしてるね」
実は、ニヤけそうになる顔を必死に抑えてた、なんて恥ずかしくてまだ言ってない。
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