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UFOとカラス
同じ大きさ、同じ顔色のレタスがずらりと並ぶ、24時間営業のスーパーマーケット・ハローの前を通り過ぎたあたりで、今日もUFOが閃光を煌めかせ、ユラユラ飛びまわり「ハロー」と光って、僕ちゃんを先導する。
そのレタスくらいの光の玉はいつの頃からか頭痛と一緒に現れるようになった。
UFOは何故か眼前の右斜め上あたりをいつも飛ぶ。
「UFOよ、いつもありがとう。やたらと目が滲むがね、とても虹色に、ん?」キーンと耳鳴りが「んーあー、ひびくわぁ」痛いくらいうるさい「二日酔いツラッ!」アスピリンの効き目がどうやらうすいようだ。そもそも効いているのかどうかも怪しいもんだ。
金属のように艶めいたカラスが2羽、辺りを伺いながらゴミを狙っていたので「ガァ! ミートパイにすんぞ!」と目から光子力ビームを出して一喝してやった。
僕ちゃんは幼少の頃からマジンガーZさながらよくビームを発射する。
「たまに殺したてホヤホヤの生のネズミ、啄んでたりすんだよね。でらエグイ」、なんてことを言っても思っても、僕ちゃんはカラスが大好きだった。
もちろんどっかの都知事のように、カラスをしめて羽をむしってさばいて食べて骨だけにするわけではない。
ましてやミートパイなんかにはしない。
よく観察すると鳥としてはなかなかのイケメンなことと全身黒コーデがおしゃれなこと、たまに飛ばずにスキップして移動する姿に胸をくすぐられることだった。
子供が追い回しても全く動じない。
くちばしだって日本刀みたいでイカしている。
ジャンプ力だって結構ある。
ガードレールくらいの高さなら彼らはたいして羽ばたかずに跳びのってみせる。まるで忍者だ。
カラスをカラスと認識してからもう何年も、何十年も経っているのに、まだ触ったことが一度もない。
絶対にあの漆黒に手は届かないのだ。
その距離は永遠だ。
「わーんもーたーいむ!」と、僕ちゃんはカナリアのようにぴよぴよ歌いながら夢や希望や明るい未来、そして思い出したくもない過去や、見たくもない幻覚やトラウマなどなどを象徴するかのような、歩道に散らばったゴミどもを飛び越えた。
「あらよっ出前一丁!」と、いう間にちいさかった頃の僕ちゃんは身長178センチの僕ちゃんになり、体重は95キロを超え、あと少しで100キロになりそうな食生活を送っていた。
目をつぶれば「ムフフ」と宙に浮く牛丼とハンバーガー。
フットワークと心持ちだけだは、あの肩まで伸びた長い髪の若く恐れを知らない58キロの僕ちゃんのまま、軽くて俊敏だ。
おっぱい揺れるけどね「プルプル」。
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