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「十年は前の話だ。南へ抜ける街道、首都へ抜ける道だ。その街道沿いに城が一つある。対角線上の対角に2階建てと2つの円形のループ穴のある塔があり、小さくて正方形の城だ。そこに伝わる話だよ」
明日、この町から南東に伸びる街道を通って首都へ行く予定だった。その街道の話かもしれない。これはおもしろそうだと、ルイスはイスをガタガタと鳴らして男の方を向いた。
「そこの城主、城主と言ってもその建物を合法的に手に入れただけの男で周辺を支配しているわけじゃあなかったんだが。まあ、その街道沿いに旅人が泊まるとしたらそこしかないような場所だ。その男は北の方の出身、スコットランドだったか。医者だったらしい。名前は何だったかな。忘れてしまった」
田舎暮らしでも楽しみたかったのだろうか。それとも故国で何かやらかして逃れてきたのか。
「ある時から、その城の周辺で人が消えるという噂がたった。その街道を通って南へ抜けようとした連中が、何人も辿り着かなかった。遭難するような道じゃあないし、野盗が出るっていう噂もない。いないわけじゃあないだろうが、船を襲うか港町の商家に盗みに入った方が金になるからな」
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